トピックス−活動報告
【11.04.29】最低生計費試算運動の集大成シンポ開催
「賃上げと社会保障の充実にいかそう」
静岡県では昨年から1年以上かけて最低生計費の試算運動にとりくみ、静岡県評も主体的に関わってきました。昨年6月に25歳若年単身世帯の最低生計費を試算し、その結果が首都圏や東北地方と差がないということを証明し、発表しました。
この結果を最低賃金中央審議会委員に示して、最賃の大幅改善を要請してきたところ、それまでの「地域間で格差があるのは当たり前」という議論が転換され、全国で「昨年より最低10円以上アップ」の指針や「最賃を2020年までに時給1000円に」という画期的な政労使の合意が示されました。
また今年1月には、50歳代4人世帯の最低生計費が約800万円であることも試算し、30代、40代の試算も大詰めとなっています。そうした状況の中、静岡県における最低生計費試算運動の集大成として、静岡県労働研究所が主催するシンポジウム「これだけは必要だ!静岡県の最低生計費」が4月29日(金)に静岡市の労政会館で開催され、静岡県評からも多数の参加者がありました。
『支払い能力論』ではなく、労働者の生活目線『生計費』で考える
最初に静岡労研主任研究員で県立短大講師の中澤秀一氏が基調報告を行いました。中澤主任研究員は若年単身世帯、50歳代の4人世帯について、静岡市と首都圏などとを比較し、その特徴を説明しました。この中で、静岡市の50歳代世帯が首都圏よりも約100万円低くなったことについて「子どもを通わせている大学が、首都圏では私立、静岡では国公立で、この教育費の差が大きい」と述べました。また、シングルマザー世帯や30歳代3人世帯、40歳代4人世帯についても現時点の試算を発表しました。
続いて、シンポジウムに入りました。静岡労働研究所所長で静岡大学教授の布川日佐史氏がコーディネータを務め、パネリストとして全労連の伊藤圭一調査局長、パート臨時連絡会の佐伯かをり代表、そして静岡県評の林克議長の3人がパネリストとして発言しました。
伊藤調査局長は「最低賃金(最賃)を時給1000円以上にという全労連の要求に自信が持てる試算になった。棚に奉らずに大いに活用してほしい」と語りました。また「最賃は、つい時給800円とか1000円とかいった、よく目にする相場で考えてしまいがちだが、そうした『支払い能力論』ではなく、労働者の生活目線、つまり『生計費』で考える必要がある」と述べました。
佐伯代表は昨年の最低賃金引上げのために最低生計費試算運動を積極的に活用して、昨年の最賃の議論を様変わりさせた経験を語りました。
林議長は「時給1366円の場合、県内で5700億円の生産や35000人以上の雇用が誘発される」と述べました。また「社会保障が拡充されれば生計費は下げることができる、教育・住居・医療など、第二の賃金である社会保障に目を向けよう」と訴えました。
会場からは「今回の最低生計費試算には介護の部分が組み込まれていない」という重要な指摘や「職業・産業別最低賃金制度への展望を」などの意見も出されました。
まとめの発言では、「介護の視点は十分ではなかった。議論をすすめ、今後の調査には反映させていきたい」「職業別・産業別賃金については、まず『誰でもどこでも』の最賃の後に、専門性を上乗せした議論になる」「法定最賃と企業内最賃の両面から運動を進めていきたい」「社会保障については現物支給か現金支給かをよく議論する必要もある。充実させる社会保障の仕分けが必要だ」といった発言があり、これからの運動の方向性を示唆する重要なシンポジウムとなりました。
静岡県表は、今後も最低生計費試算運動を活用し、最低賃金の引上げだけでなく、公契約条例運動や民間・公務員賃金を改善する運動にも積極的に活用していきます。